区長の基本姿勢と長期計画について
1.新長期計画策定の考え方について
最初に、区長の基本姿勢に関連をして、新しい長期計画について伺います。
新長期計画の素案が公表されました。この素案を現行の長期計画と比べたとき、目に付くのはその形式の際立った違いです。
まず、現行の計画にある「施策の方向」と各政策ごとの「施策の体系」についての記述が消え、計画事業以外の主要事業の内容や方向性が見えなくなってしまいました。計画事業は、総財政支出の7.9%。一般財源に限って言えば6%を占めるに過ぎません。残りの9割以上の財源を投入して行われている事業・事務をどう進めていくのかを抜きに、将来の区政のトータルな姿を語ることは出来ないはずです。抜き出された一部の「計画事業」に過度な力点を置いた計画づくりは、区政全体、事業全体をどう見渡し、作り上げていくかという視点の欠如につながりかねません。
第二の違いは、各施策ごとに、「成果を測るモノサシと目標値」が前面に掲げられたことです。いわば「成果」主義というべきこうしたやり方は、目標をどう達成するかという方法、手段への志村区政の強い関心を表しています。それは、なるほど区の組織とエネルギーを特定の目的へと動員していく上では一定の有効性を持つでしょうが、他方では、さまざまな施策の方向性とめざすべき区政の姿を、まとまりのあるものとして考え、評価する道を閉ざしてしまうという重大な欠陥と表裏一体のものでもあります。
「計画事業」主義と「成果」主義を大きな柱とする新長期計画は、何をめざすかよりも、どうめざすかに大きな力点と関心が置かれているという意味で、理念なき実行計画、アクションプランになろうとしていると言わざるを得ません。素案を見る限り、新しい長期計画には、区政の「総合」計画、「基本」計画としての深みと広がりが感じられません。5年という短期間の計画にした以上、ある意味では当然の帰結であったとも言えますが、区政の大きな転換点にこうした計画しか持てないとすれば、それはとても残念なことであると考えます。
区長は、なぜそれぞれの施策を俯瞰し、計画事業だけでなく、施策の柱となる主要な事業すべてについてしっかりとした方向性を語るところから始めなかったのか。現行計画の中間的な改定ではなく新しい長期計画をめざすのであれば、なぜ少なくとも10年のスパンで、区政のありようとめざすべき姿を明瞭かつ体系的に語ろうとしなかったのか。まず、この点についてお尋ねします。
答弁・区長
はじめに、新長期計画の策定の考え方についてであります。
昨年度、有識者や公募区民の方々で構成される行政評価委員会から現行長期総合計画の施策体系について評価・提言をいただきました。これを参考として、計画目標から事務事業にいたるまで、目的・手段の関係で関連付けた施策の体系に再構築いたしました。従いまして、事務事業をはじめ政策、施策等は、計画目標に向けた明確な方向性をもって体系的に位置づけられているものであります。
事務事業については、計画本書にはお示ししておりませんが、施策評価や事務事業評価を通して、それぞれの目的に照らした検証や、評価ができる仕組みにしております。
なお、目的・手段の関係で整理された施策体系だけでは、計画期間中に区が何を重点的かつ優先的に取り組むかが見えにくいため、7つの重点課題を掲げ、目的・手段とは別の視点で課題別に主要な取り組み項目を明示したところであります。
また、区の基本計画である長期計画は、財政計画の裏付けがあってはじめて現実性を持つものであるため、長期計画策定方針でお示ししたとおり、今回の新長期計画から、財政推計が予測可能な5か年の計画としたところであります。
コメント
ぜひ計画「素案」を読んでみてください。とても薄っぺらな感じがするはずです。厳密な意味で財政的な裏づけを求めるなら、今もある「中期計画」がせいぜいでしょう。具体的な数値目標や経費見積もりの厳密性ではなく、区政全体の姿をどう描くかという問題です。
2.長期計画の骨格について
政策分野のバランスについて
次に、新長期計画の骨格となる内容について、何点かお尋ねします。第一は、政策分野のバランスについてです。計画事業の財政推計を見ると、総事業費の77.0%、一般財源のうち77.6%が環境まちづくり分野に投入されます。他方で、児童福祉を含む健康福祉分野は総事業費の4.5%、一般財源でも7.3%にしかなりません。現行長期計画では、計画事業費全体の11.5%が保健福祉分野にふりむけられ、しかもこれは児童分野を含まない数字でしたから、まさに様変わりです。
さらにくわしく見ると、高齢者関係の計画事業費は、総計で現行の59億8000万から29億900万へと半減し、障害者関係は、23億強からわずか1億8000万円へと激減しています。力を入れたはずの児童関係にしても、4億4600万から4億3400万へとむしろ減少しています。計画事業におけるこの劇的ともいえる比重の転換、重点の移動をどう説明するか、お聞かせください。
答弁・企画部長
私から、長期計画に事業における政策分野の経費の割合についてのご質問にお答えいたします。
長期計画事業については、その性格上、事業の完成に期間を要する施設整備などの事業が多くを占めております。そのため環境まちづくり分野に関連した計画事業費は全体の約8割、600億円となっておりますが、現長期総合計画でも同じ分野では約570億円で、計画事業費の総額に対する割合でみると、ほぼ同じでになっております。
一方、教育分野の計画事業について見ますと、計画事業が126億9干万円と、現長期総合計画と比較して60億円以上増加し、倍増しております。これは、地域体育館の建設および校舎・体育館耐震化工事が新規に計上されているためであります。
このように、長期計画事業費の政策分野の経費割合については、施設の建設費など投資的経費の増減によって左右されるものであります。また、健康福祉分野では、今年度当初予算でみますと、福祉関連経費が840億円、5か年にすると4000億円以上の規模があり、長期計画事業以外の事業を主体に、関連する施策の展開を着実に推進していく分野と考えております。
コメント
まちづくり分野は現行維持、教育施設の整備が大きくなったぶん、福祉関係が圧迫される。そんな説明ですが、それでよいのかと私は問うたつもりなんですけどね。
「委託化・民営化」の範囲について
第二は、「委託化・民営化」計画と区政の将来像についてです。
「委託化・民営化」方針では、「民間でできるものは民間にゆだねる」という原則の下で、@法令の規定があるもの、A公権力の行使に当たるもの、B政策的事項の企画立案・調整・決定の3つを除いて、すべての事務事業について「委託化・民営化」を検討するとしていました。何を、どこまで「委託化・民営化」するのか。それは、区政と区組織の将来像にとって決定的とも言える意味を持っています。これまで区が担ってきた保健福祉サービスのうち、今後も直営の事務事業として残るもの、残すべきと区が考えているものがあるのか、あるとすればそれは何か、まずお聞かせください。とくに、学童クラブ、保育園、福祉園については、現在は一部施設の「委託化」が進められていますが、直営施設と委託施設の役割分担をどう整理しているのかについても、あわせてお答えください。
答弁・健康福祉事業本部長
はじめに、保健福祉サービスにかかる委託化・民営化についてであります。
保健福祉サービスの民営化・委託化につきましては、基本的には「民でできることは民で」との区の「民営化・委託化」方針に基づき、サービス水準の維持向上や経費削減効果などを総合的に勘案したうえで、毎年度、検討し実施してきております。
区が直営で担うべき事務事業の範囲は、委託等の受皿となる民間事業者の力量などに左右されますし、時代状況の変化とともに大きく変わっていくものと考えており、一概に、これが直営、あれは委託と事務事業を単純に分類することはできません。
学童クラブ、保育園、福祉園などの福祉施設につきましても事務事業の委託化・民営化と同様でありますが、現在保育園等につきましては、現状計画の着実な実施を図っており、この検証を行いつつ更なる取り組みを進めてまいる所存でございます。
コメント
「民にできることは民へ」などという大げさな原則を掲げたのは区のほうです。将来のことはわからない、「委託」か「直営」かははっきりしない。なんとも腰が据わらず、筋の見えない話です。要するに、手を付けられるところから、手を付けられるだけ「委託化・民営化」の実績をあげていく。そういうことでしょう。それなら少なくとも「委託」施設と「直営」施設の役割分担、サービスの公平性をどう考えるか、ちゃんと説明してほしいものです。
3.いくつかの施策の位置づけについて
障害者自立支援法と障害者施策について
第三に、区政のありようを深く特徴付けるいくつかの施策に関連して、お考えを伺います。
「障害者及び障害児の福祉の増進を図るとともに、障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与する」という目的を掲げた自立支援法が成立し、これにもとづく障害者施策の一大転換が始まろうとしています。就労、社会参加も含めたノーマライゼーションの推進と、施設から在宅への移行、重い障害があっても地域で生活していける基盤作りを目指して、障害者施策を質量ともに底上げすることは区政の喫緊の課題です。ところが、先に述べたように、障害者施策にかかわる計画事業はわずか3つ、事業費は現行計画に比べて10分の1以下に減ってしまっています。障害当事者と家族の不安を解消するためにも、障害者施策に精力的に取り組む区の姿勢と決意を明らかにすべきと考えますが、いかがでしょうか。
答弁・健康福祉事業本部長
第三の障害者施策にかかわる計画事業についてであります。障害者自立支援法が平成17年10月31日に成立し、11月7日に公布されたことに伴い、障害者施設.事業体系が抜本的に変わることとなります。現在の福祉園、デイサービスなどに代わる新事業基準は、今後、国が政令、省令で定めることとなっており、新長期計画においては、施設そのもののあり方が変わることや、日程的な関係から、数量的な目標を出せない状況にあります。一方で、障害者自立支援法の制定に伴い、平成18年度中に、障害者基本法に基づく障害者計画の改定、および障害者自立支援法に基づく障害福祉計画の策定を行う必要があります。従いまして、福祉園、デイサービスなどに係る計画事業につきましては、これら両計画の中で検討し、整理して参ります。
コメント
自立支援法との兼ね合いで具体的な事業や目標を書きにくかったのはわかります。でも、どんな姿勢と考え方で、自立支援法下での施策を進めていくかくらいはちゃんと書かなきゃ。結局、大きな制度の転換に対応できない、目先だけの「長期計画」だということをさらけ出すようなものです。
男女共同参画施策について
国際交流や男女平等の取り組みは、地域社会における市民的権利のありようを深く左右する重要な施策ですが、新長期計画素案の記述はまったく貧弱です。男女共同参画社会づくりは、現行計画では「豊かで活力ある21世紀の我が国の社会を決定する大きな鍵」とされていたのに、新長期計画素案では独立した施策としてすら扱われず、「職業生活と家庭生活の両立支援」や「男女の自立を支える社会環境の整備」といった方向性は言葉すら見つかりません。姿勢と熱意が後退していないでしょうか。
答弁・総務部長
はじめに、男女共同参画施策の今後の取り組みについてお答えします。
練馬区新長期計画の素案におきましては、「平和と人権を尊重するまちをつくる」という政策のもと、「人権の尊重と男共同参画を進める」施策を示し、この施策を実施するため、区では、来年度から実施する第2次練馬区男女共同参画計画の策定を進めております。この第2次練馬区男女共同参画計画の素案においては「誰もが働きやすい就業環境と女性の活躍支援」、「自立を支える社会環境の整備」などの目標を設定し、男女共同参画社会の形成を推進することの大切さを掲げているところです。今後も、第2次練馬区男女共同参画計画に基づき、男女共同参画社会の実現を目指してまいります。
コメント
とても納得できないなあ…。長期計画で基本の考え方がしっかり立てられてこそ、個別の事業計画が生きてくるというもの。「素案」の記述は、本当に貧弱なんです。
国際交流事業について
現在の長期計画で検討事項とされていた国際交流センターは、どこで、どのように検討され、なぜ新しい長期計画から消えてしまったのでしょうか。また、現行計画で掲げられながらはかばかしい前進のなかった外国籍区民の区政への参加・参画は、これからどのように進めるのでしょうか。国際交流協会の解散という一歩後退が次の二歩前進につながるよう、明確な方向性をお示しください。
答弁・総務部長
次に、国際交流についてであります。
練馬区国際交流協会は、平成3年度に事務室を移転し、情報掲示板の活用やボランティアとの連携による施策展開などを通じて、ご質問の国際交流センターとしての役割も果たしてきました。今般、新行革プランに伴う外郭団体の見直しを進める中で、練馬区国際交流協会は、平成17年度をもってその業務を終了し、平成18年度からは、区が交流センター機能を含んだ地域の国際交流推進事業を実施する予定であります。区では、今後外国籍住民を含めた懇談会等の設置を検討するなど、外国籍住民が地域において安心して快適に生活し、他の区民と交流できるための環境整備に努めてまいります。
コメント
国際交流協会が「国際交流センター」だったなんて説明は、初めて聞いた!以前、特別委員会での質疑では「国際交流センターについては検討をしておりません」という答弁だったのに…。ちょっとずうずうしい居直りに聞こえてしまいます。
区政の主要な施策について
次に、新長期計画素案の内容も踏まえながら、これからの練馬の区政において大きな課題となる施策・事業のいくつかについて、質問します。
1.学童クラブ・保育園について
待機児解消について
最初に、学童クラブと保育園について伺います。
これら二つの事業は、子育て中の女性が働き続ける上では欠かすことのできない事業でもあり、たんなる「子育て支援」の枠を超えて男女共同参画社会の形成、さらにさかのぼれば憲法にうたわれた「勤労の権利」を区民、なかんづく女性に保障するためのきわめて重要な施策です。学童クラブと保育園は、現在、それぞれ今年度で155人、263人もの待機児童が出ています。区は、条例に基づいてこの事業を実施しており、保育園・学童クラブに入れない子どもが何百人といる事態が何年も続くとしたら、それは由々しきことです。素案では、5年後の目標として、学童クラブと保育園の待機児童の解消をうたっていますが、待機児解消は、単なる努力目標や理想ではなく、区の責務です。まず、待機児解消に向けた決意をお聞かせください。
答弁・健康福祉事業本部長
次に、新長期計画素案を踏まえた施策.・事業についてであります。 まず、学童クラブと保育園の待機児解消についてであります。
学童クラブにつきましては、放課後保育に欠ける児童が希望どおり学童クラブに入会できるよう、小学校学区域内に学童クラブがなく入会需要が見込まれる地域への施設の新設、施設の増改築等による定員拡大、放課後児童等の広場事業の実施施設の拡大などに積極的
に取り組んでいきます。保育園につきましては、認可保育園の新設や定員の見直し、認証保育所の増設などにより受け入れ定員枠の増に努めてまいります。
コメント
「努める」じゃだめだ、責務なんだから決意を、と聞いたのに、逃げられてしまいました。がっかり。
障害児の放課後保育について
練馬区の学童クラブや保育園で実施されてきた障害児保育が試練を迎えています。とくに学童クラブでは、保護者の状況、本人にとっての集団保育の必要性といった点では十分に学童保育の対象とすべきであるにもかかわらず、障害の程度が比較的重かったり、介護や見守りのための人手が足りないといった事情から入会を拒否される障害児が毎年、出ています。現在の学童クラブにおける障害児受け入れは、実際には、内部的なマニュアルでしかない判定表にもとづく機械的な点数評価で判定が行われています。両下肢の機能が失われ車いすが離せない子どもはそれだけで入会が不可となるような現在の判定基準は、著しく差別的であり、これを直ちにあらためるとともに、人的な配置などを含め幅広く障害児が入会できるように運用を見直すべきと考えますが、いかがでしょうか。
また、健常児との集団保育になじめない障害児には、そもそも放課後保育の機会そのものが保障されておらず、保護者も、当のお子さんも、大きな負担と不安を抱えています。次世代育成支援行動計画にも盛り込まれた、重度障害児の放課後保育についての検討はどのように進められ、事業化に向けた課題や方向性はどう整理されたのでしょうか。お答えください。
答弁・健康福祉事業本部長
次に、学童クラブにおける障害児保育についてであります。
現在、学童クラブにおきましては、障害の程度が中程度の児童を保育の対象としております。障害児の入会判定については、生活面、運営面、安全管理面、身体面の各判定項目に対する点数評価で行っており、適正な判定方法であると考えております。また、幅広く障害児が入会できるように運用を見直すべきとのご指摘についてであります。障害児2名につき1名の臨時職員の配置を行っておりますが、現在、区直営の学童クラブでの受け入れ定員2名を、委託をしている学童クラブでは3名としており、受け入れ枠の拡大に引き続き努力してまいります。
さらに、重度障害児の放課後保育についてであります。次世代育成支援行動計画に検討課題として位置づけ、障害児福祉の所管課とも協議するなど、検討に着手したところであります。現在の学童クラブでの保育については、施設状況や職員配置状況から、困難と考えており、ご指摘の事業化における課題や方向性の整理等を含め、今後検討してまいります。
コメント
委託クラブでは3名だから、なんていうのは、少しも説明になりません。なぜ直営では二人なの?それに、人数だけじゃなく、受け入れる障害の範囲が狭いと指摘しているのに。重度障害児の居場所についても、どう検討してきたのか、と聞いているのに、ただ「検討します」。何も検討してこなかったから答えられなかったということなんでしょうか。
2.介護保険にいて
二つ目は、介護保険についてです。
介護保険料の設定について
介護保険事業計画の素案が公表されました。制度発足後5年にして抜本的ともいえる大きな転換点を迎えた中、介護保険を運営する保険者として、区が果たすべき役割はかつてなく重いものになっています。
税負担の引き上げ、医療・年金も含めた社会保障負担の増大のなかで、介護保険の保険料・利用者負担もまた、大きく引き上げられようとしています。制度の維持と安定的な運営にとって財源の問題は誰もが避けて通れない課題であるとはいえ、しかし、その解決の方向性、具体的な対応策は決して一様ではないし、まさに自治体の自主的な姿勢と力量が問われるところです。
事業計画素案では、介護保険料については法の示す基本形に忠実に、保険料区分は6段階とし、各段階ごとの保険料率も標準割合どおりという前提で、基準保険料月4,200円という数字が示されています。これは現在に比べて3割近い保険料の引き上げであり、とくに非課税層、あるいは税制改正の影響によって本人課税に移行する層にとって深刻な負担となりかねません。どうやって負担を軽減するか。給付を減らし、利用者負担を引き上げるのは、もっとも安易な解決です。要介護高齢者の生活を社会全体で支えていくという介護保険の責務を果たしつつ必要な財源を確保するためには、国庫負担割合の引き上げといった制度見直しを別にすれば、介護保険料の逆累進性にメスを入れることがどうしても必要です。たとえば、年間所得が年金の100万円だけという人と、1000万円を越す所得がある人を比べた場合、収入という点では10倍以上の開きがあるのに、素案では介護保険料は2倍の格差しかありません。合計所得金額が200万円以上になると、所得の多寡にかかわらず定額の保険料になるために、所得が高いほど負担が実質的に軽減されるという逆進的な構造になっているのです。こうした逆進性を是正することで、比較的所得の低い階層の保険料負担は少なからず軽減されます。保険者の裁量で所得の高い階層に保険料段階を追加し、保険料率についてもより高い割合を賦課することは、厚生労働省も積極的な取り組みを促しているところです。介護保険はたんなる「保険」ではなく、社会保険、つまり社会保障の一環としての保険であり、そして、能力に応じた負担は社会保障の大切な原則のひとつです。介護保険料の逆進性を是正し、課税層、そのうちの特に所得の高い層に応分の負担をお願いすることによって、保険料基準額を引き下げるべきであると考えますが、いかがでしょうか。
答弁・健康福祉事業本部長
まず、計画期間中の第1号被保険者の介護保険料についてであります。素案で提示した保険料につきましては、第2期までの運営状況および今後の保険給付費の伸びなどを考慮し、現段階での情報をもとに算出したものであります。被保険者の保険料設定については、ご提案の方法以外にも多くの段階設定の考え方があることは承知しております。区としましても、今後、介護報酬の見直しなど保険料算定に影響を及ぼす要素もあることから、多段階設定を含め、更なる精査を行ってまいりたいと考えております。
コメント
保険料段階設定については、少なくとも素案のような工夫も配慮もないものにはならないだろうと期待できそうな答弁でした。
「居住費・食費」の負担軽減について
他方、「居住費・食費」の自己負担化に伴う大幅な利用者負担増は、じわじわと介護基盤を掘り崩しつつあります。第三回定例会で明らかにしたように、この「居住費・食費」負担の導入は、保険給付の縮減を通して区の一般財源からの繰り入れを大幅に、推計では年1億円以上、減少させるものです。この繰り入れ減少分も財源にして、「居住費・食費」負担に対する区独自の軽減策を実施する考えはないのでしょうか。お答えください。
答弁・健康福祉事業本部長
また、居住費・食費負担についてでありますが、今回の見直しは、介護保険の保険給付の範囲を「介護」に要する費用に重点化し、「居住」や「食事」に要する費用は、保険給付の対象外とするものであることから、制度改正の趣旨を尊重すべきであり、区独自の軽減策は、現状では考えておりません。
コメント
国の言うまま、言われるまま。情けない…
施設整備計画について
今回の事業計画で目立つのは、施設整備に対する消極的な姿勢です。介護保険施設の整備は長期計画の素案では計画事業自体からはずされてしまいました。介護保険の事業計画では施設の利用見込みとして数字が示されていますが、それによれば、2010年では特別養護老人ホームはかろうじて現行計画水準並み、老人保健施設に至っては3割も目標を引き下げています。両施設合わせた定員増は499、グループホームなど他の介護専用型の居住系施設あわせても2010年までの整備数は1,400人分にしかなりません。区は、この間に要介護度4ないし5の人数はあわせて2,000人以上増えると見込んでいます。しかも、現在でも2,500人近い待機者がおり、そのうち要介護度3以上だけでも1,500人を超しているのです。それにもかかわらず、こうした低い整備目標しか立てなかったのはなぜでしょうか。区のこうした目標設定は、実は、国の示した参酌標準を大きく下回っています。特別養護老人ホーム待機者解消のために真剣に取り組む決意はあるのか。それとも、施設の入り口を機械的に狭め、要介護高齢者を不安定な在宅介護の中に放置するつもりなのか。お答えください。
答弁・健康福祉事業本部長
次に介護保険施設の整備計画についてであります。
施設整備計画は、新長期計画素案の中で政策分野の長期計画事業として位置づけており、特別養護老人ホームの整備はホームヘの入所が不可欠な方の待機解消を第一の目的として、必要な整備量
を見込んだものであります。併せて、要介護状聾になっても自宅で暮らすことを望まれる方が多数おられるという区民の意向、用地の確保と隣接住民同意が必要という施設整備の条件、整備計画数を余りに多く設定すると介護保険料の高騰を招くことなどを総合的に判断したものであります。具体的には、小規模多機能型居宅介護、夜間対応型訪問介護などのサービスにより居宅生活の支援を強化するとともに、要介護度の重い方のために681人分の介護保険施設や252人分のグループホームなどを整備することとしております。
コメント
「ホームヘの入所が不可欠な方の待機解消を第一の目的として、必要な整備量を見込んだ」…「不可欠な方」って誰?どのくらい見込んだの?「総合的に判断」という立派な表現が、やたらとうつろに聞こえてきます。
在宅介護の基盤整備について
在宅の介護基盤拡充のための取り組みも真剣さを疑わせるものです。たとえば、昨年度時点で訪問リハビリテーションは計画目標の45.2%、ショートステイは同じく67.1%しか整備されていません。この二つの事業は、中・重度の要介護高齢者が在宅生活を維持し重度化を予防していくために不可欠のものですが、その立ち遅れをこれからどうやって解消していくのでしょうか。今回の制度改正で新たに導入された「地域密着型サービス」について実効性ある整備手法と整備計画を盛り込むことも含め、要介護高齢者の生活実態とニーズをしっかりと踏まえてサービスの底上げをはかるべきと考えますが、いかがでしょうか。
答弁・健康福祉事業本部長
次に、在宅サービス基盤の拡充についてであります。介護保険制度におけるサービスの提供は、民間事業者によるところであり、また、専門職種の確保や単独でのサービス提供が困難なことなどの理由により、訪問リハビリステーションやシ,ヨートステイといった居宅サービスに供給不足が見られるところであります。計画素案では、今後、区民が安心して居宅での生活が継続できる仕組みづくりを重点的な取り組みに位置づけ、事業者に対して、これまで以上に情報提供などの働きかけを行うことで、事業者誘致や事業者育成に積極的に取り組んでまいります。
また、地.域密着型サービスの整備に当たっては、指定権者としての権限発揮や地域介護・福祉空間整備等交付金を活用することで、質の高いサービスが提供できる事業者の誘致を図ってまいりたいと考えています。ご指摘の実効性ある整備手法などについては、現在、鋭意検討を進めております。
コメント
本当に言葉だけ、という感じの答弁です。「これまで以上に情報提供を行う」ことで解消されるような問題なのでしょうか?「民間事業者による」って、区立の施設は何のためにあるの?
地域福祉権利擁護事業について
介護保険サービスの今後のあり方を考えるとき、適切な権利擁護の仕組みづくりはきわめて重要な課題です。この点では、法的な権利行使にあたる成年後見制度、個々のサービスについての苦情の解決に当たる苦情調整委員制度とあわせ、現在、社会福祉協議会が実施している地域福祉権利擁護事業の拡充・整備が不可欠です。この事業は、認知症などで十分な判断が困難な人に対して日常的なサービスの利用や金銭管理の支援を継続的に行うというもので、単身の高齢者などを対象に、ここにきて急速に利用が広がっているサービスです。あらたに設立される地域包括支援センターでもこの地域福祉権利擁護事業との連携にとりくむこととされており、そうした点も踏まえて、以下、提案・要望し、区の見解を求めます。
一点目として、1時間1,000円ないしは2,500円という利用者負担が、地域福祉権利擁護事業を利用する際の大きなネックとなっています。費用負担のために適切な権利擁護を受けられず、公的福祉サービスの利用が損なわれる事態はあってはならないことであり、今後、介護保険の地域支援事業のひとつとして位置づけることも含め、地域福祉権利擁護事業の利用に対する支援に区として積極的に取り組むべきではないでしょうか。
また、地域福祉権利擁護事業を担うスタッフのうち支援員は、利用料以外に人件費にかかる安定的な財源がないこともあって、現在、全員が登録型の雇用であり、不安定な雇用・労働条件の下に置かれています。また、国庫補助の対象となっている専門員についても、きわめて専門性の高い、かつ困難な職務に当たっているにもかかわらず、人員の不足が深刻になっています。支援員、専門員の増員と待遇の改善のために、区として何らかの支援を行うべきではないでしょうか。
以上、二点について、区の考えをお示しください。
答弁・健康福祉事業本部長
最後に、権利擁護の仕組みづくりについてお答えします。
まず、社会福祉協議会の地域福祉権利擁護事業を介護保険の地域支援事業に位置づけることについてでありますが、地域支援事業の実施主体は、基本的には市町村と定められていることから、現時点では困雑であると考えております。なお、利用者の負担につきましては、サービス利用者の経済状況や事業の推移等を見極めたうえで、区の支援の必要性・あり方等について社会福祉協議会と協議してまいりたいと考えております。
また、地域福祉権利擁護事業の生活支援員につきましては、11月の区報で募集をし、年明けから増員する予定であります。募集の説明会には100名を超える方の参加があったと聞いており、識見と熱意ある人材の確保が可能なものと考えております。専門員につきましても、10月に権利擁護センターを設置したのを機に、1名増員を図ったところであります。今後とも、社会福祉協議会全体の経営改革の進捗とあわせ、事務量に見合った職員体制に留意してまいります。
コメント
利用者負担について社会福祉協議会と協議していく、
という答弁は前向きに評価できます。でも、スタッフのほうは、ごまかされた感じです。支援員が登録型ばかりでいいの?と聞いたのに答えなし。専門員についても、増員した上でも人員不足が深刻ではないかと聞いているのですが…。「事務量に見合った職員体制」という言葉に、いくらかでも足がかりは残るのかなぁ
3.特別支援教育について
次に、特別支援教育について伺います。
今、障害児に対する教育は、これまでのいわゆる「特殊教育」から「特別支援教育」へと歴史的な転換を迎えようとしています。しかし、それにもかかわらず、新長期計画の素案には、この転換を切り開いていく方向性はきわめて希薄です。
この分野では心身障害学級の増設が唯一、計画事業としてあげられているのみです。通常級での障害児に対する支援がほとんど取り組まれてこなかった一方で、心障学級の数が限られ、通学自体に大きな負担を強いられる中で、心障学級の増設を求める声が強いことは理解できるところです。しかし、特別支援教育への転換の大きな流れを見据えれば、心障級の増設だけではなく、むしろ、通常級での配慮を要するさまざまな子どもたちへの支援を改善すること、副籍制や特別支援教室の活用と交流教育・共同学習の実践を通して心障級や養護学校と通常級との垣根を低くしていくこと、校内委員会やコーディネーターを設置し、「場」の区別を越えた学校全体でのトータルな支援の体制を整備していくことこそが肝心ではないでしょうか。
新しい長期計画の中で特別支援教育への移行を明確に打ち出し、モデル事業も含め、必要な事業を計画化すべきと考えます。お答えください。
答弁・教育長
私から特別支援教育に関するご質問について、お答えいたします。
区の特別支援教育につきましては、新長期計画素案において、現行の心身障害教育から、発達障害を含めた障害のある児童・生徒に対する教育的支援を行う特別支援教育への転換を明確に示したところであります。教育委員会におきましては、これまでの心身障害教育の成果と課題を踏まえながら、心身障害学級の増設、教員に対する特別支援教育の理解・啓発に関する研修の実施、配慮を要する児童・生徒への支援・指導のための指導資料集の作成や学級経営補助員等の人的配置など、特別支援教育を見すえた条件整備、人材育成等に取り組んでいるところであります。
現在、保護者、障害者支援団体、学校関係者および学識経験者等を交えた「練馬区特別支援教育のあり方検討委員会」を設け、国が予定している平成19年度からの実施に向け検討に着手したところであります。今後の具体的な取り組みにつきましては、校内委員会やコーディネーターの設置、モデル事業等の実施など、ご指摘の点も含めて、この委員会の中で検討を進めてまいります。
以上であります。
コメント
たぶん、「特別支援教育への転換」の持つ奥行きと広がりを、教育委員会はまだ直視していないと思います。引き続き議論していける課題です。
4.外環道延伸計画について
次に、外環道の延伸についてお尋ねします。9月、国土交通省と東京都は、「東京外かく環状道路(関越道〜東名高速間)についての考え方」を公にしました。「計画の具体化に向けて」という副題から明らかなように、高架方式を前提とした現在の都市計画の改定に向けて具体的な一歩を踏み出したと言うべき動きです。外環道の現状が道路交通網としていびつなものであり、地域社会や周辺の道路交通環境にさまざまな負荷を与えていることは事実ですが、他方で、現実に外環道の延伸を計画化・事業化する際には解決すべき課題が極めて大きいことも見逃すことはできません。練馬区は、外環道延伸計画について、早期の実現、青梅街道インタチェンジの設置などを求めて積極的な発言を続けてきましたが、その際、以下の点についてどのような認識と立場に立っているのか、改めて確認をさせて頂きます。
第一は、大深度地下方式の安全性についてです。外環道が大深度地下方式で整備されれば、全長16kmという巨大トンネルの自動車専用道路が誕生することになります。つい先日も、トンネル内で車両火災が発生するという事故がありましたが、大深度地下方式の安全性について、区はどのように認識しているかお聞かせください。
第二は、国家財政への影響をどう見るかという点です。地上部街路を除く外環本線の工事だけで、国はどのくらいの経費がかかると概算しているか、お示しください。また、区は、現在のきわめてきびしい国家財政に過重な負担とゆがみを持ち込むことなく、この経費を捻出することが可能であると考えているのかどうか、お答えください。
第三は、八の釜憩いの森と湧水についてです。国と東京都が示した「考え方」に基づけば、東大泉にある八の釜の憩いの森と湧水が消滅する恐れがあります。区として、憩いの森と湧水の保全について、どのような姿勢で臨むのか、お聞かせください。
第四は、大泉ジャンクション部の全面地下化についてです。「考え方」やその後公表された「概念図」を見ても、大泉街道の北側、東大泉2丁目や三原台などはジャンクションとインタチェンジによる地域分断など多大な影響が懸念されます。そうした影響を緩和し、さらには八の釜憩いの森などの保全に資するという点でも、大泉ジャンクションの完全地下化について真剣に検討すべきです。国・都が計画の具体化に向けて動き出した今、区として、改めてこの完全地下化についてその効果や影響を検討するよう強く求めるべきだと考えますが、いかがでしょうか。
答弁・環境まちづくり事業本部長
はじめに、東京外かく環状道路についてお答えします。
まず、大深度地下方式の安全性についてですが、国と東京都では、安全の確保などの課題を技術的に検討するため、本年11月十四に有識者による「大深度トンネル技術検討委員会」を設置したところであります。区としては、この委員会の中での検討を通し、十分な対策が講じられ、安全が確保されるものと認識しております。
次に外環本線の経費ですが、国の発表によると1兆2000億円と試算されております。また、今回の「考え方」において、国と都が外環の必要性は高いと判断したことから、事業の実施に向け必要な予算が確保されるものと認識しております。
次に、八の釜憩いの森と湧水についてでありますが、当該地は、長年区民に親しまれてきた貴重な樹林地と湧水であります。したがいまして、外環の事業化が図られる中で、近隣の地域内での代替施.設の確保に努めるなど、必要な対策を講じるよう、国、都に対して強く求めてまいります。
次に、大泉ジャンクションの完全地下化につきましては、物理的な条件や費用対効果、地域への影響を踏まえた検討が必要とされます。区といたしましては、今後、計画の具体化が計られる中で、望ましい方法を求めてまいります。
コメント
安全性と財政については、「検討委員会」と国、都の判断に下駄を預けた形ですが、そんなに簡単にいくのでしょうか。今後の動きをしっかりチェックしていく必要があります。
5.建築行政について
最後に、大きな社会問題となっている建築行政について伺います。一設計事務所が建築確認の際の構造計算書を偽造したことに端を発したこの問題は、いまや、建築にかかわる許認可に対する信頼そのものを深く傷つけるものとなりつつあります。練馬区では、建築基準法にかかる事務は適正に執行されているのでしょうか。練馬区が所管する建築行為に関して、法が求める工事の中間検査、完了検査の実施状況をお示しください。また、法定の検査すら徹底されていない状況は深刻な問題であると考えますが、適正な建築確認ならびに検査の実施のために、区として今後、どのような対策を講じていくのか、お聞かせください。
答弁・環境まちづくり事業本部長
次に、建築行政についてお答えいたします。
検査事務は建築主からの申請に基づき行政が実施するもので、申請を受けたものに対しては、すべて適切に:検査を実施しております。区が平成15年度に建築確認を行った建築物のうち、木造三階建など中間検査の対象となる建築物で申請があつたものは77%、全建築物が対象となる完了検査では63%であり、すべての建築物について、すべて申請がなされてるとは言えない状況です。ちなみに、平成9年度の完了検査率は28%でしたが、平成11年度以降、都が定めた建築物安全安心実施計画に基づき取り組んできた結果、検査率は年々向上してまいりました。今後は、この取り組みを拡充するとともに、国などの動向を見極めながら、更なる検査率の向上に向けて実効性の高い対策を検討してまいります。
コメント
なんだか弁解がましい答弁ですが、要するに、中間検査、完了検査さえ、やられていない物件が数多くあるということ。こういう基本の検査を「申請がないから知らない」とは言ってられないでしょう?しっかりしてもらわねば。
今回の書類「偽造」事件は、はしなくも、「民にゆだねる」ことに伴う大きなリスクと、「民」を適切に指導・監督することの困難さを浮き彫りにしました。安易に「委託化・民営化」に流れる風潮が区政に蔓延する中で、あらためて、区民の生活といのち、安心と希望を支えるよりどころとしての公務の役割と責任を再確認し、公務労働の自己研鑽と再活性化をこそめざすべきことを最後に訴えて、私の一般質問を終わります。
|