いぶき22号

2005年8月15日発行

期待と不安

開院した順天堂練馬病院

■主張

  • 期待と不安
    開院した順天堂病院

 

■池尻成二の議会報告

 

■地域発しゅぽっぽボイス

 

■練馬をつくる

  • 小規模多機能ホーム「みちしるべ」

 

■市民の声ねりまから

  • 第3回総会報告

  • 23区学童クラブの障害児受入れ状況調査結果

 7月1日、「順天堂大学付属練馬病院」が開院しました。ベッド数400、診療科は28を数え、区内で最大規模の病院になります。新しい建物とゆとりのある空間、最新の医療機器、アメニティに配慮された意匠、スタッフの熱意や意気込みも感じられます。区民の期待がふくらんでいきます。しかし、開院が近づくにつれて、あらためて不安と課題も浮かび上がってきました。

100億を越す財政支援

 この順天堂練馬病院は、練馬区が誘致した、区民に支えられた病院です。この病院は、決して一大学法人の私的な病院ではありません。
 2001年12月、当時の岩波三郎練馬区長は、石原都知事に対して「区の誘致する新病院の病床の確保について(お願い)」という文書を出しているのですが、その中にはこう書かれています。

 「今般の区の誘致計画では、公的な目的と役割を担える病院とするため、区は施設整備費を相当程度補助することとしております。また、区の主体性を施設計画に反映させるために、区が施設の基本設計を行います。さらに、会員後は、区の誘致条件に沿って運営が行われ、区立病院と同様の性格と機能を有する病院となります。」

 「区立病院と同様の機能と性格を有する病院」――岩波前区長がこう言ったのには、もちろん、理由があります。順天堂練馬病院は、練馬区の、練馬区民の、ほんとうに手厚い支援がなければ、決して生まれることはなかったのです。
 なかでも、区の財政的な支援は、広範囲かつ大規模なものとなりました。順天堂病院の開院に向けて、練馬区が直接、間接に行った財政支援は100億円の規模を悠に超えます(表)。

順天堂練馬病院に関する区のおもな財政支出

解体工事経費

828,538,725円

基本設計委託料

48,175,000円

建設費に対する補助

7,000,000,000円

地代免除相当額 ※1

1,788,195,000円

長命寺借地料負担分 ※2

446,760,000円

長命寺借地契約更新料 ※3

80,925,000円

小計

10,192,593,725円

歩道橋整備経費 ※4

616,414,000円

周辺区道整備経費 ※4

200,212,000円

総計

11,009,219,725円

※1 区有地部分を有償賃貸借とした場合に、どの程度の地代が発生するかを試算したもの。※2の借地料を基に計算
※2 病院敷地の一部は、区有地ではなく長命寺が所有する土地となっており、この部分については区が長命寺から有償で賃借し、それを順天堂に無償で又貸しする形になっている。その区が負担する地代額(30年分として計算)
※3 長命寺との借地契約について、土地用途が以前の教育センターから病院用地に変更になったための、契約更新料
※4 バリアフリー化など、高野台駅から順天堂病院へのアクセス改善を主な目的として、笹目通りに歩道橋(区道)を新設、周辺区道を整備するための経費

 100億円を越す財政支援。病院の建設費だけ見れば、総額80億円のうち70億円、つまり約85%が公費です。あの立派な建物の大半は、税金が形を変えたものということになります。
 これだけ大きな支援を受けた病院です。立派な施設、高度な医療機器、或いは高名な大学病院であるだけではだめです。「公的」な病院、「公的」な医療の担い手でなければなりません。公的な病院、「区立病院と同様の機能と性格を有する病院」に求められるものは何でしょうか。それはたとえば

  • 広く区民が分け隔てなく――お金があろうがなかろうが、コネがあろうがなかろうが、利用できる病院であること

  • 順天堂と縁の深い医療機関だけでなく、広く地域の全ての医療機関に開かれた運営を行ない、地域医療の核となること

  • 医療、保健、福祉などの区の施策に積極的に協力すること

などでしょう。しかし、こうした点では、実は順天堂練馬病院は、少なからぬ不安と課題をかかえているのです。

紹介率は「30%」が目標――地域医療連携は進むのか

 最新鋭の医療機器や高度な医療技術、優秀なスタッフがどれほどそろっていても、それを有効に活用するためには、広く区民のために、かかりつけのお医者さんや日大光が丘病院も含めた地域の医療機関と患者さんの紹介を通して適切な役割分担と連携を作り出していくことが不可欠です。区外からの飛び込みの患者さんに振り回されることなく、区民にとって身近で頼りがいのある病院にするためにも、区内の医療機関との紹介システムはとても有効です。
 ところが、紹介率(紹介患者の割合)について、順天堂練馬病院は「30%以上を目標とする」としか言っていません。もともと病院開設者選定の際には、区は「紹介率は30%以上。開設後は地域医療支援型の病院として紹介率50%以上を目指す」ことを条件としていました(募集要項)。順天堂自身が示した事業提案でも、「当面30〜40%を目指す」としていたのです。それからすれば、ずいぶんと後退してしまいました。

4割を越す差額ベッド――“医療差別”は許されない

 もう一つの大きな不安は、差額ベッドの問題です。国の基準では、もし自治体率の病院であれば、差額ベッドの割合は全ベッドの3割までとなっています。他方、私立大学病院だということであれば、5割まで認められます。なるほど形は順天堂大学という一私立大学の付属病院です。しかし、実態は区が深く関わり、「区立病院と同様」とまで言い切った病院です。差額ベッドはどうするのか。議会でも大きな議論になりました。
 結局、差額ベッドの設定について、区と順天堂大学は次のような内容で合意しました。

順天堂練馬病院の差額ベッドの設定

室名

全ベッド数

差額ベッド数

差額

特別室

7

7

60,000

個室

74

21

24,000

37

22,000

2人室

26

26

10,000

4人室

280

80

4,100

その他病床

13

 

合計

400

171 (42.8%)

※個室のうち16床は、重症患者専用の個室(HCU)で差額徴収ができない。
「その他病床」は、ICU、CCU

 差額ベッドの割合は42.8%と、4割を超えました。4人部屋でも、1日4,100円の差額が徴収されます。2週間入院すれば、5万円を超えてしまいます。もちろん、医療費の自己負担分は別です。
 医療保険があるとは言っても、保険の自己負担分がどんどん大きくなり、しかも保険がきかない負担が次々と出てきて、“いのちの沙汰も金次第”という状況がじわじわと広がってきています。そんな時代だからこそ、公的な病院ではできるかぎり差額ベッドを減らし、収入や家計の多寡に関わりなく、誰もが安心して医療を受けられるようにしてほしい。それは、当然の願いでしょう。4割を越す差額ベッドは、多すぎます。とくに4人部屋については、部屋のつくりも同じ、「調度類で差をつける」というだけで4,000円の差額などとんでもありません。

 もともと、順天堂練馬病院は高度急性期医療に重点を置いているため、慢性疾患、長期療養疾患、回復期リハビリなどの対応は期待できません。また、至近の距離に同じ大学付属病院である日大練馬光が丘病院があるのですが、この両者の役割分担や連携のあり方が整理されていないことも気になります。患者の権利も含めた医療の具体的な「質」がどうなっているのかも、まさにこれから問われてきます。
 今後、連絡協議会が開催されていくことになります。「区立病院と同様」の病院にふさわしい運営と医療のあり方を求めて、順天堂練馬病院のこれからをしっかりと見守って行きましょう。