いぶき25号

2006年5月15日発行

安易な「委託」はやめるべきだ

区立保育園の民間委託問題

■主張

  • 安易な「委託」はやめるべき

  • むごい…。へし折られた木々の痛みを感じないか

■池尻成二の議会報告 第1回定例会

  • 予算案反対討論要旨

  • 予算案審議から

  • 体育館の耐震調査結果

■地域発しゅぽっぽボイス

 

■新シリーズ
   「市民の目」

  • 図書館業務委託

■市民の声ねりまから

  • 関町、石神井でティーブレイク

保育士の1/3が退職!

 3月17日、志村区長名で「改善勧告」が出されました。勧告を受けたのは、ピジョン株式会社。光が丘第八保育園の運営を委託された企業です。勧告にはこうあります。

 「乙(ピジョン)は、…光が丘第八保育園の子どもたちの最善の利益のために誠実かつ最大限の努力をもって事業運営を行う責務を有する。しかるに、今般、従事する保育士等が本契約期間内において多数退職する事実が判明した。かかる事態は、園児やその保護者に多大なる不安をもたらすのみならず、維持すべき保育の質そのものに重大な影響を及ぼしかねない。甲(練馬区)は、かかる事態を、看過できない憂慮すべき事態と捉える。」

 これまで、区立保育園はすべて直営で運営されてきました。区は、この区立保育園の運営を「民間委託」する方針を一昨年の8月に表明、その第一園として、12月1日から光が丘第八保育園はピジョンの運営に移ったのです。
 ところが、正式に委託が始まってわずか3ヶ月で、ピジョンはこんな勧告を受ける羽目に陥ってしまいました。3月末までに退職する保育士はなんと8名、常勤保育士総数の1/3を越します。さまざまな研修を受け区の保育を引き継ぐ中核となるはずたった保育士たちが、委託開始後わずか3ヶ月のうちに大量に退職してしまうという事態は、あまりに異常です。
 勧告は、具体的な改善項目として、欠員だらけの保育体制の建て直し、マネジメント体制や保護者との信頼関係のの未確立など4点を指摘しています。およそ事業の基本の基本で、光が丘第八保育園の「民間委託」はつまずいてしまったのです。

園長まで

  しかも、それだけではありませんでした。この改善勧告が出されたあと、ピジョンの園長がとうとう退職、光八保育園は新年度を迎えるもっとも大変な時期に園長不在という緊急事態になってしまいました。 後任の当てがなかったのでしょう。ピジョンは、練馬区に園長候補の紹介を依頼。4月に入って新しい園長に元区立保育園の園長が就任しましたが、その経緯を練馬区自身がこう説明しています。

園長交代に至る経過
  3月中旬、病気療養のため、園長が不在となった。ピジョン株式会社として新園長を探したが適任者が見つからず、区に仲介の労をとってもらいたい旨の依頼があった。区としても、園の安定的な運営のためには、施設長である園長の不在を早急に打開することが必要であると判断し、区立保育園の園長経験者をピジョン株式会社に紹介した。 2006.4.18健康福祉委員会資料

 きびしい勧告を受けた上に、園運営の柱になる園長をみずから探すことができず、区にすがって紹介してもらう――これはもう、正常な委託のあり方ではありません。少なくともこの時点で、ピジョンは、受託業者としての自主的な能力と適格性を失ったと言うべきです。こと光が丘第八保育園に限っては、「民間委託」は破綻した、そう言わざるを得ません。

何より重い区の責任

 もともと光八の委託にあたっては、当初から委託までの準備期間が少なすぎるなど、強引な区の姿勢は際立っていました。たびたびのスケジュール変更で年度途中の委託となったこともあり、募集に応じたのはわずか4社、しかもすべてが営利法人で社会福祉法人はひとつもありませんでした。その後、保護者の推薦する委員も交えて発足させた業者選定委員会がこれら4事業者のいずれについても「委託を可とする意見は多数を占めるに至らなかった」(選定委員会報告 2005.7.20)という結論を出すと、今度は区みずから新たに選定会議を立ち上げて選定をやり直し、先の4社の中の1社、ピジョンを選定するというなんとも強引な手に出ます。
 それでも、うまく行ったならよかったのです。しかし、実際は見たとおり。受託したピジョンの責任はもちろん大きいのですが、しかしそれ以前に、果たして区の判断と対応は適切であったのか、深くきびしく問われ ています。
 保育園には、現に100人もの乳幼児と保護者の生活がかかっているのです。保育の質を落とさない、立派に安心できる保育をやってもらえる、そんな約束がどれほど重いものであったか、約束がきちんと履行されていないことがどれほど深刻なことであるか、区も、事業者も、私たちも、しっかりとわきまえなければなりません。

保育園「委託」の教訓

 結局、光八の運営は、4月以降もピジョンに委ねられたままです。あれだけのことがあったにもかかわらず、区は、新年度もピジョンと委託契約を交わしました。責任を回避し問題を糊塗する区の姿勢は、とても残念です。 光が丘第八保育園の事態は、保育園の民間委託が実はどれほど困難なことであるかを改めて教えてくれています。もちろん、保育の質が落ちてもかまわない、託児所程度のサービスがあれば十分、というなら話は別です。しかし、委託の中で練馬の区立保育園が長年にわたって培ってきた保育の質を維持していくことは、容易なことではありません。 保育を支えるのは人であり、保育士などの経験と知識の裏づけが決定的であす。また、その経験と知識は、保育士集団が継続的・安定的に維持されてこそ受け継がれていくものです。質の高い保育のためには、保育士などが腰をすえて、また意欲を持ってはたらき続けるにふさわしい労働条件と待遇が、そして現場の力と意欲を引き出し生かしていくためのマネジメント、組織の力が欠かせません。
 営利企業でもかまわない、経費を削ることが大目的だ、そして単年度契約で人をかき集めてくるような事業者でも質の高い保育が可能だ――光が丘第八保育園で、区はこうした姿勢を取り続けてきました。今改めるべきは、まさにこうした姿勢です。経費節減、つまり「安上がり」に保育を済ませる手段として「委託」を考えていく限り、必ず同じ失敗と混乱を繰り返すでしょう。少なくとも福祉や教育にかかわるサービスでは、安易な委託はやめるべきです。